潤滑油中に含まれる摩耗粒子は、機械内部におけるクリアランス(すきま)の変化や損傷の進行を示す指標です。
粒径分布から摩耗段階や発生部位の傾向を読み解き、時系列トレンドを追跡することで異常の立ち上がりを早期に捉えられます。
本記事では、摩耗粒子が内部状態の指標になる理由や粒径分布の見方などをまとめました。
潤滑油中に浮遊する固形微粒子の正体は、摺動部、歯車、軸受などから剥離した金属粉や摩耗粉、あるいは外部から侵入した砂塵です。
機械部品のクリアランス(すきま)に入り込んだ粒子が金属表面を引っ掻き、新たな摩耗粒子を生み出す「摩耗の連鎖」が発生します。
粒子の大きさや硬度は、摩耗速度に直接影響を与える要素です。
潤滑油は機械全体を循環するため、特定箇所で発生した摩耗粒子も油を介して採取可能。装置を分解することなく内部状態を推定できます。
分析において着目すべき物理量は、粒子の量、粒径、形状、組成などです。
各要素の変化は摩耗の進行度や、アブレッシブ摩耗(硬い粒子がすきまに入り込んで削る摩耗)や凝着摩耗(金属同士が溶着して剥がれる摩耗)といった摩耗モードを反映します。
測定データから機械内部の状態を正しく把握するには、数値を解釈するための基準が必要です。
粒径、個数、時間変化、清浄度コードといった視点を組み合わせて、現象を読み解く方法を解説します。
粒径分布の形状を確認することは、摩耗ステージや摩耗源を推定する第一歩です。
5µm未満の小粒子が優勢な状態は、一般には初期摩耗や安定摩耗の範囲内に留まっているケースが多いと考えられます。
25µm以上の大粒子が急激に増加する現象は、異常摩耗や損傷が差し迫っている可能性を示す目安です(※設備や油種によって目安は異なります)。
粒径分布のばらつきが拡大した場合、複数の摺動部から異なるサイズの粒子が発生している可能性や、負荷変動の影響が疑われます。
特定のサイズ域で粒子が継続的に増加する傾向は、同程度のクリアランス(すきま)を持つ特定部位で摩耗が進行している可能性を示すもの。
分布の変化は内部損傷の進行と密接にリンクするのです。
コンディションモニタリング(状態監視)では、単発の測定値ではなく、時系列での変化を追跡することが前提です。
通常運転中の安定状態と比較して粒子数が緩やかに増加し続ける挙動は、初期異常や潤滑条件悪化の兆候となります。
試験開始から一定時間経過後に金属摩耗粒子数が急増するのは、過酷摩耗状態への移行を意味する現象です。
周期的な数値の揺らぎが見られる場合、負荷の周期変動や油温変化に伴う潤滑状態の不安定さが粒子数に反映されている可能性があります。
正常な摩耗トレンドからの逸脱を見逃さない視点が重要です。
粒径や粒子数の生データは、「ISO4406」や「NAS1638」といった国際規格に基づく清浄度コードへ変換することで、管理しやすい評価指標となります。
ISO4406では、1mLあたりの4µm(c)以上、6µm(c)以上、14µm(c)以上の粒子数をレンジ番号で表し、「18/16/13」のように汚染度レベルを簡潔に可視化。
数字が小さいほど油がきれいで、コードが1ランク上がるごとに粒子数がおおよそ2倍になります。
例えば「18/16/13」から「19/17/14」に変化した場合、4µm以上の粒子数が約2倍に増えたことを意味します。
NAS1638は、もともと航空機分野で策定され、油圧・潤滑分野でも長く利用されてきた清浄度規格です。
現在はISO4406による管理へ移行する動きが主流ですが、既設設備ではNASコードでの管理が継続しているケースも少なくありません。
異なる設備や試験条件であっても、コード値を用いることで横並び比較や目標値の設定が容易になります。
異常発生時には、「コードのランクが何段階悪化したか(数値がどれだけ大きくなったか)」という基準で判断を下すことが可能です。
摩耗粒子分析が提供するメリットと、日々の運用で注視すべきポイントを整理します。
金属摩耗粒子数の変化は、振動や温度の上昇よりも早い段階で現れるケースが多く、異常の早期検出に有効な指標です。
また、潤滑油サンプリングによる診断は非破壊で行えます。ポンプや減速機を分解点検する工数やコストを削減できるのもメリットです。
損傷を兆候段階で把握し、計画停止や部品交換へつなげることで、突発的な試験中断や試作品の焼き付きを予防できます。
試験スケジュールの遅延や再試作に伴う手戻りコストを抑制可能です。
現場では3つの視点を順に確認するルーチンが推奨されます。第一に粒径別の増減をチェックし、小粒子と大粒子の比率や大粒子の急増有無を定量的に把握。
第二に時系列トレンドに着目し、定期サンプリング間での総粒子数や特定粒径の変化率を監視します。
例えば、初期値比で1.25倍といった変化が現れた場合など、自社で定めた許容範囲を超えたタイミングでは注意が必要です。
第三に清浄度コードの逸脱を確認します。各設備や試験条件における平常時のISOコード基準を把握し、ランク上昇を確認した時点で詳細調査や停止判断を実施。
粒径・時系列トレンド・清浄度コードの3要素を組み合わせた観察サイクルで、異常検知の精度を高められます。
従来の振動監視や温度管理よりも早い段階で異常の芽を摘むために、摩耗粒子分析は有効な手段です。
粒径分布の変化、時系列トレンドの推移、清浄度コードの逸脱を複合的に分析することで、内部損傷の兆候を正確に捉えられます。
試作品の焼き付きやギヤ欠損といった重大トラブルを未然に防ぎ、試験スケジュールの確保や再試作コストの削減につなげることが可能。
粒子数と粒径分布を短時間に自動測定し、清浄度コードへ換算したりトレンド管理をしたりといった役割を担う装置が「オイルパーティクルカウンタ」です。
当メディアでは用途別にオイルパーティクルカウンタ3機種を紹介しています。製品ごとの特徴や仕様について、下記の記事から詳細をご確認ください。

配管に据え付けてデータを自動取得する方式により、抜き取り式では捉えにくい摩耗粉の傾向的変化を計測。設備状態を点ではなく傾向で把握可能。
装置ごとに異なる摩耗粒子のサイズに合わせて測定レンジを8つ設定可能。固定粒度では見逃してしまう変動も検知し、状態監視の精度が安定する。
PCから遠隔で状態変化の傾向を確認でき、夜間や遠隔設備でも見落としにくい。履歴はLAN経由で自動的に蓄積され、現場での記録作業を省ける。
| 計測方式 | 光遮蔽法 |
|---|---|
| 検出粒子径範囲 | 5~150µm |
| 1回の計測液量 | 約20ml |
| 計測可能周囲温度 | RT(室温)~60℃ |
| 外形寸法 | 高さ290(+脚15)×幅285×奥行390(mm) |
| 重量 | 約22kg |

電源不要のバッテリー駆動で、成形機の裏や建機ヤードなど、電源が取りにくい場所でもそのまま測定できる。
測定後わずか2分でISO4406/NAS/AS4059の清浄度コードを表示するため、その場で結果が分かる。点検の流れを止めずに作業が完了する。
鉱油・燃料・Skydrolまで対応するため、油種が混在する現場でも使い回せる。台数を増やさずに済むためコスト効率が良い。
| 計測方式 | 光遮蔽法 |
|---|---|
| 検出粒子径範囲 | - |
| 1回の計測液量 | - |
| 計測可能周囲温度 | - |
| 外形寸法 | 高さ:277mm/長さ:240mm/幅:158mm |
| 重量 | 8kg |

4µm級の微小粒子まで安定して検出できるため、評価データの精度が上がり、品質保証の確度が高まる。
粒子を画像で取り込み、形状から摩擦・切削・疲労などの摩耗の種類を自動分類。発生メカニズムを特定し、再発防止の根拠づくりがしやすい。
清浄度コード(ISO/NAS)、粒子画像、形状分類の結果をレポートで出力。必要な証跡がそろった状態で提出できるため、監査や顧客説明の準備が短縮される。
| 計測方式 | 直接イメージング(CCDカメラ+レーザー照射) |
|---|---|
| 検出粒子径範囲 | 4µm~100µm |
| 1回の計測液量 | 数mL |
| 計測可能周囲温度 | - |
| 外形寸法 | - |
| 重量 | - |