グリースの摩耗粉管理|潤滑性能と清浄度

目次

機械設備の安定稼働において、グリース中の摩耗粉管理は欠かせない要素です。摩耗粉の増加は潤滑性能の低下や、予期せぬトラブルの引き金となります。本記事では、摩耗粉の発生原因や適切な管理方法を解説します。

グリース中の摩耗粉とは?発生メカニズムと種類

摩耗粉が発生する基本的な原因

機械の稼働中、金属部品同士が接触して擦れ合うことで、表面が微細に削り取られて摩耗粉が発生します。通常はグリース中の基油が形成する潤滑流体膜によって接触面の摩擦・摩耗を抑え、金属の直接接触を防いでいます。しかし、荷重、速度、温度、表面状態、潤滑状態などの様々な条件が重なり局所的に潤滑膜が破断してしまうと、金属面が直接こすれ合い、細かな粉となってグリース中に混入していきます。初期段階では非常に小さな粒子ですが、状態が悪化すると徐々に大きな金属片が剥がれ落ちる傾向があります。

凝着や疲労など摩耗形態による粉の違い

発生する摩耗粉の大きさや形状、表面状態には、内部で生じている摩耗の種類(凝着摩耗、アブレシブ摩耗、疲労摩耗など)によって一定の傾向が現れます。たとえば、金属同士が溶着して引き剥がされると比較的大きな粒子が、硬い異物で削られると細長い削りかすのような形状が発生しやすい傾向にあります。ただし、実際の摩耗粉は複数の摩耗機構が混在して発生する場合も多く、粉の形状だけで摩耗の原因を断定することはできません。形状観察は、あくまで内部の損傷状態を推測する重要な手がかりの一つとして扱われます。

グリースの劣化が摩耗粉増加を加速させる理由

摩耗粉が増える背景には、グリース自体の性能低下が深く関わっています。長期間の使用による機械的なせん断や酸化、熱などの影響により、グリースのちょう度(硬さ)やレオロジー特性(変形や流動の性質)、基油の油分離性などが変化すると、本来の潤滑性能を維持できなくなります。その結果、金属表面に十分な潤滑膜を形成できず、摩擦を軽減できません。さらに、外部からの水分やチリといった固体異物の混入も潤滑性能を低下させ、摩耗を促進する要因となります。このような状態で使い続けると、摩耗粉の発生スピードがさらに上がってしまう懸念があります。

摩耗粉の放置が引き起こす設備への影響

潤滑性能の低下と金属部品の損傷

グリース内に摩耗粉や外部からの異物が蓄積していくと、潤滑剤本来のなめらかな動きを妨げる原因になります。金属粉などの硬い微小な粒子が混入した状態では、これらが研磨媒体のように作用して部品の表面を傷つけてしまいます。その結果、ベアリングやギアといった重要な機械部品において、摩耗や圧痕(くぼみ)の形成が進行しやすくなります。微小な傷であっても、稼働を続けるうちに傷が広がり、軸受などの寿命を大幅に低下させる要因となるため、摩耗粉を放置することは機械に深刻なダメージを与えると言えます。

摩耗粉が新たな摩耗を引き起こす連鎖的リスク

発生した摩耗粉を取り除かずに稼働を続けると、その摩耗粉自身が新たな摩耗を引き起こすリスクが高まります。剥がれ落ちた金属片が正常な部品表面まで削り取ってしまい、削られた面からさらに新しい摩耗粉が発生するという悪循環に陥るおそれがあります。この連鎖によって、初期の小さな異常が徐々に大きな損傷へと発展していくため、気づいた時には機械内部全体に被害が広がっていることも考えられます。そのため、摩耗粉の増加傾向をいち早く把握し、被害の拡大を防ぐことが求められます。

突発的な設備停止や品質不良への発展リスク

摩耗粉による部品の損傷が進行すると、機械の突発的な停止につながるおそれがあります。生産ラインが予期せず止まってしまうと、復旧までのダウンタイムが発生し、事業に大きな損失をもたらすかもしれません。また、機械の動作精度が落ちることで、製造する製品の品質に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。異常な振動や異音が発生した場合は、すでに摩耗や潤滑不良などが進行している可能性があるため、早めに原因を確認し、給脂やアライメント調整、部品交換などの適切な対応をとることが重要です。

グリースの摩耗粉を管理・対策する方法

定期的なサンプリングと状態監視の徹底

設備を長く安定して使うためには、グリースの状態を定期的に監視する取り組みが非常に重要です。ただし、グリースはオイルと違って流動性が低いため、設備のどこからどのようにサンプリングするかによって分析結果が変わりやすい点に注意が必要です。採取したグリースの色や臭い、目視での異物・水分確認は簡易的な状態把握に有用ですが、それだけで摩耗粉の量や摩耗状態を正確に評価できるわけではありません。トラブルが起きてから対処するのではなく、適切な手順で定期的にサンプリングを行い、総合的に状態を判断する予防的な保全活動が求められます。

測定機器を活用した鉄系摩耗粉の評価

より客観的な管理を行うためには、ASTM等の規格に基づく測定機器を活用し、グリース中の鉄系摩耗粉を定量的に評価する手法があります。ただし、測定値の大小だけで単純に摩耗の進行度を判断するのは危険です。設備ごとに、通常稼働時の摩耗粉量(ベースライン)をあらかじめ設定し、そのベースラインからの増加傾向を見ることが重要とされています。鉄系摩耗粉の量は摩耗状態を評価する指標の一つとして捉え、他の状態監視データと組み合わせて部品の交換時期やメンテナンスのタイミングを計画的に立てることが推奨されます。

適切な給脂サイクルによる潤滑状態の維持

摩耗粉の増加を抑え、潤滑状態を維持するためには、機械の稼働条件や環境に合わせて適切な量と頻度で給脂を行うことが求められます。軸受の構造や給脂方法、排脂口の有無などの条件が整っていれば、再給脂によって使用済みグリースとそれに含まれる汚染物質(摩耗粉や外部異物)を外部へ排出する効果が期待できます。ただし、過剰な給脂は攪拌による発熱や早期故障につながる可能性もあるため注意が必要です。設備ごとの構造を理解し、メーカーが推奨する基準に応じた無理のない給脂管理が、機械を良好な状態に保つ有効な対策となります。

摩耗粉の適切な管理で
設備の安定稼働と長寿命化を

グリース中の摩耗粉は、機械内部で進行している見えない劣化のサインです。放置すれば潤滑性能が低下し、突発的な故障や生産停止といった重大なトラブルを引き起こす要因になり得ます。定期的なサンプリングや測定機器を用いたベースライン比較を取り入れ、摩耗の兆候をいち早く捉える姿勢が大切です。設備の構造に適した給脂管理を行い、グリースの潤滑性能を維持することで、大切な設備の寿命を延ばし、安全で効率的な生産活動を続けることにつながります。日々の正確な知識に基づいた管理が、将来のリスクを減らす確かな一歩となります。

当メディアでは、用途や試験環境別にオイルパーティクルカウンタをご紹介。まずは下記の記事から、自社の評価試験に適した一台を見つけてください。

用途別オイルパーティクルカウンタ おすすめ3選
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設備状態モニタリング
変化を連続的に
捉えたいなら
PI-1000(東陽テクニカ)
東陽テクニカ公式サイト
※画像引用元:東陽テクニカ公式サイト(https://www.toyo.co.jp/lp/las/)
状態変化をトレンドで
捉えられる計測方式

配管に据え付けてデータを自動取得する方式により、抜き取り式では捉えにくい摩耗粉の傾向的変化を計測。設備状態を点ではなく傾向で把握可能。

設備固有の摩耗特性に合った
粒度で最適化

装置ごとに異なる摩耗粒子のサイズに合わせて測定レンジを8つ設定可能。固定粒度では見逃してしまう変動も検知し、状態監視の精度が安定する。

遠隔でチェックしながら
自動でログ蓄積

PCから遠隔で状態変化の傾向を確認でき、夜間や遠隔設備でも見落としにくい。履歴はLAN経由で自動的に蓄積され、現場での記録作業を省ける。

計測方式 光遮蔽法
検出粒子径範囲 5~150µm
1回の計測液量 約20ml
計測可能周囲温度 RT(室温)~60℃
外形寸法 高さ290(+脚15)×幅285×奥行390(mm)
重量 約22kg
巡回点検
清浄度をその場で
判定したいなら
Icount LaserCM(Parker)
Parker公式サイト
※画像引用元:Parker公式サイト(https://ph.parker.com/jp/ja/product-list/icount-lasercm-portable-particle-counter)
現場のどこでも使えるポータブル式

電源不要のバッテリー駆動で、成形機の裏や建機ヤードなど、電源が取りにくい場所でもそのまま測定できる。

ISO/NAS表示で
2分後には結果が出る

測定後わずか2分でISO4406/NAS/AS4059の清浄度コードを表示するため、その場で結果が分かる。点検の流れを止めずに作業が完了する。

複数の油種を1台で計測可能

鉱油・燃料・Skydrolまで対応するため、油種が混在する現場でも使い回せる。台数を増やさずに済むためコスト効率が良い。

計測方式 光遮蔽法
検出粒子径範囲 -
1回の計測液量 -
計測可能周囲温度 -
外形寸法 高さ:277mm/長さ:240mm/幅:158mm
重量 8kg
原因分析
不良原因や摩耗の種類まで
突き止めたいなら
LaserNet 200(Spectro Scientific)
Spectro Scientific公式サイト
※画像引用元:Spectro Scientific公式サイト(https://www.spectrosci.com/product/lasernet-200-series)
4µm級まで検出し、
品質判断の見落としを防ぐ

4µm級の微小粒子まで安定して検出できるため、評価データの精度が上がり、品質保証の確度が高まる。

粒子の形まで見え
原因特定が早い

粒子を画像で取り込み、形状から摩擦・切削・疲労などの摩耗の種類を自動分類。発生メカニズムを特定し、再発防止の根拠づくりがしやすい。

監査対応の証跡をまとめて出力

清浄度コード(ISO/NAS)、粒子画像、形状分類の結果をレポートで出力。必要な証跡がそろった状態で提出できるため、監査や顧客説明の準備が短縮される。

計測方式 直接イメージング(CCDカメラ+レーザー照射)
検出粒子径範囲 4µm~100µm
1回の計測液量 数mL
計測可能周囲温度 -
外形寸法 -
重量 -